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最高裁判所第一小法廷 平成元年(オ)745号 判決 1993年1月21日

上告人

株式会社山形県水産公社

右代表者代表取締役

原田行雄

右訴訟代理人弁護士

戸田滿弘

土田耕司

被上告人

船山朋子

船山幸恵

船山朋美

右両名法定代理人親権者

船山朋子

被上告人

船山しか

右四名訴訟代理人弁護士

小林英一

被上告人

渡部由紀子

渡部陽子

渡部真実

右両名法定代理人親権者

渡部由紀子

被上告人

渡部ウメノ

右四名訴訟代理人弁護士

正木宏

被上告人

森田五郎

森田孝

渡邉孝

渡邉ミツ

右四名訴訟代理人弁護士

中村洋二郎

主文

原判決中上告人敗訴部分を破棄する。

右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人戸田滿弘、同土田耕司の上告理由第三について

一原審が確定した事実関係は、次のとおりである。

1  上告人は、保有している漁業用船舶栄久丸(359.1トン)について、昭和五四年一〇月、(一) 株式会社山形造船所(以下「山形造船所」という。)に対し、船舶安全法施行規則二四条に定める定期検査を受ける準備事項中機関に関する準備を除くその余の準備事項、艤装、錨のチェーン点検、チェーンロッカーの清掃等の作業を、(二) 有限会社酒田舶用機器整備センター(以下「整備センター」という。)に対し、右定期検査を受けるための準備事項中機関に関する準備事項、主機、補機、集魚灯エンジン、動力伝達装置等の整備点検作業を、(三) 株式会社テイオン(以下「テイオン」という。)に対し、冷凍装置の整備点検作業を、それぞれ発注し、右各社はこれを請け負った。

2(一)  栄久丸の冷凍装置は、アンモニアを冷媒とするもので、冷凍装置内にはアンモニアが液化アンモニアとアンモニアガスの変化を繰り返しながら循環しているが、圧縮機のピストンに使用される潤滑油がアンモニアガスと混じり、冷凍装置の回路内を回ることがあるため、冷凍装置のオイルセパレーター、レシーバー、コンデンサー、リキットラップ及びアキュームレーターにそれぞれ潤滑油を排出するためのドレン抜き弁が付設されていた。

(二)  テイオンが上告人から請け負った作業内容は、冷凍装置の圧縮機三台のオーバーホールやオイルセパレーター、レシーバー及びアキュームレーターからの油抜き(潤滑油を排出すること)などであり、コンデンサーからの油抜きは含まれていなかった。

(三)  アンモニアは、人体に接触すると炎症を起こし、吸入した場合には呼吸困難または中毒等の危害を及ぼす化学物質であり、そのため、テイオンがアンモニアガスを取り扱う圧縮機のオーバーホール等の作業をするときは整備センターの作業は中断し、作業員を船外に出すこととされていた。

3(一)  テイオンは、コンデンサーの冷却用海水チューブの清掃等を行うための準備として、従業員の伊藤敬治(以下「伊藤」という。)に、コンデンサーの側板を外し、冷却用海水チューブから水抜きを行い、防蝕亜鉛板の数、形状を調査する作業を命じたが、伊藤が命じられた右作業自体は、アンモニアガスを直接扱うものではなく、アンモニアガスが漏出する危険性はなかった。

伊藤は、同年一〇月三一日午後四時三〇分ころ、右作業を行うため、同僚の倉松雅夫とともに、酒田市にある山形造船所の船きょに上架されていた栄久丸に乗り込んだ。

(二)  当時、栄久丸の後部船底部にある機関室では、整備センター関係の作業員一〇名が作業をしており、栄久丸の機関長である丸山秀輝(以下「丸山」という。)も右作業に立ち会っていた。伊藤は、丸山にコンデンサーの清掃の準備と防蝕亜鉛板の調査に来たことを告げ、丸山としばらく世間話をしたが、その際丸山から圧縮機の潤滑油の消費量が激しく冷凍装置内に油がたまっている旨の話があったものの、右状態について丸山から点検や油抜きの指示は受けなかった。

(三)  伊藤は、同日午後四時五〇分ころ、機関室内にあるコンデンサーの側板の取り外し作業を始めようとしたが、ボルトを緩める工具が合わないため、倉松に工具を取りに行かせた。その間に伊藤は、丸山から冷凍装置内に油がたまっていると言われたことを思い出し、それが事実かどうか、どの程度のものかを調べるため、コンデンサーの下部についているドレン抜き弁を右手で左回しにして開けたところ、黒っぽい油状の液体が流出してきた。そこで伊藤は、コンデンサー自体にもかなりの潤滑油がたまっているものと判断し、この機会にコンデンサーから油抜きをしようと考え、一度ドレン抜き弁を閉め、油受け用の空缶を置いて再びドレン抜き弁を開けて油抜き作業を始めたが、右作業を行うことについては事前に丸山や機関室にいる他の作業員に知らせなかった。

(四)  コンデンサー内にアンモニアガスを貯留させたまま油抜きをする場合には、アンモニアの水によく溶ける性質を利用して、ドレン抜きパイプに耐圧ゴムホースを取り付け、その先端を相当量の水の中に入れ、アンモニアガスの空気中への漏えいを防ぎつつアンモニアガスの圧力を利用してドレン抜き弁にたまっている油を排出させるという方法が採られるが、この方法によるときは、油が排出された後にアンモニアガスが流出してきたところで直ちにドレン抜き弁を閉める必要がある。

伊藤は、アンモニアガスが有毒であり、コンデンサーから油抜きをするときには事前に右のようなアンモニアガスの漏出を防止する措置を採ってから行うということは知っていたが、これまでの経験から、油が排出された後アンモニアガスが流出し始めた瞬間にドレン抜き弁を閉めれば危険はないものと安易に考え、コンデンサー内のアンモニアガスの圧力等を全く考慮することなく、右漏出防止措置を講じないままドレン抜き弁を開けたのであった。

(五)  伊藤がドレン抜き弁を開けると油状の液体が線状になって約四〇ミリリットル流出して止まったが、伊藤が更にドレン抜き弁の開閉を数回繰り返したところ、突然アンモニアガスが噴出し始め、短時間のうちにアンモニアガスが機関室内に充満した。そのため、機関室内で作業をしていた整備センター関係の作業員のうち森田均はアンモニアガス吸入による中毒により、渡部庫一と渡邉誠はアンモニアガス吸入による呼吸不全により、いずれもその場で死亡し、船山隆士はアンモニアガス吸入による腐敗性肺炎にり患し、同年一一月一〇日入院先の酒田市立病院で死亡した(以下「本件事故」という。)。

4  上告人が栄久丸の整備点検作業を山形造船所、整備センター及びテイオンの三社に分割発注したことにより、右三社の従業員が栄久丸という同一場所で並行して作業を行うことになったのであるが、上告人は、労働安全衛生法三〇条二項前段による同条一項の措置を講ずべき者の指名(以下「本件指名」という。)をしなかった。

二原審は、右事実関係の下において、(一) 本件事故は、伊藤がコンデンサーの冷却用海水チューブの清掃作業の準備作業を行った際、テイオンが請け負っていないコンデンサーからの油抜きを思い付き、アンモニアガスの漏出を防止する措置を採らず、他の作業員に事前にアンモニアガス漏出の危険性のある作業を行うことも知らせないまま油抜き作業を行った過失によって発生したが、伊藤の行ったコンデンサーからの油抜き作業はテイオンが請け負った仕事に関連性がある、(二) 上告人は、栄久丸の整備点検を分割発注した者として、複数業者の作業員の作業によって生ずる労働災害の発生を防止するため、労働安全衛生法三〇条二項前段に基づき本件指名をすべき義務があるのにこれをしなかった、(三) 上告人によって本件指名がされ、指名された請負人により同条一項所定の請負作業間の連絡調整や作業場所の巡視が行われていれば、伊藤の行うべき作業の確認も明確にされ、思い付きによる作業がなされる事態を防ぎ得た、(四)したがって、本件指名を怠り、各請負業者に作業方法を一任した上告人には分割発注における発注者としての労働災害防止措置を怠った過失があり、右過失と本件事故との間には相当因果関係があるとして、被上告人らの上告人に対する民法七〇九条に基づく損害賠償請求を認容すべきものとした。

三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

すなわち、前示の事実関係によれば、本件事故当時、栄久丸の機関室において、整備センターの作業とテイオンの作業が並行して行われたのであるが、もともとテイオンがアンモニアガスを取り扱う作業をするときは整備センターの作業を中断し、その作業員を船外に出すこととされていたのであり、本件事故当日伊藤らが行うことを予定していた作業内容にはアンモニアガス漏出の危険性のあるものはなく、本件事故の原因となったコンデンサーからの油抜きは、伊藤らの右作業内容には含まれていなかったものである。してみれば、仮に労働安全衛生法三〇条二項前段に基づき本件指名がされたとしても、その指名された者において、伊藤がその場の思い付きで予定外の危険な作業を行うことまで予測することはできないし、あらかじめ請負作業間の連絡調整をすることにより、整備センターの作業とテイオンの作業が並行して行われることを避けることができたともいえない。そして、このことは、たとえコンデンサーからの油抜きがテイオンの請け負った作業と関連性があるとしても同様である。また、指名された者によって同条一項三号所定の作業場所の巡視がされたとしても、右巡視は毎作業日に少なくとも一回行うことが義務付けられているものにすぎない(労働安全衛生規則六三七条一項)から、これにより、その場の思い付きでされた伊藤の行為を現認することはほとんど期待できないものというべきである。したがって、上告人が本件指名をしなかったことと本件事故との間に相当因果関係があるとはいえない。

これと異なる判断の下に原判決中被上告人らの請求を認容すべきものとした部分には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。右と同旨の論旨は理由があり、その余の点について判断するまでもなく原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、本件については、被上告人らの民法七一五条、 七一六条ただし書に基づく予備的請求につき更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。

よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官橋元四郎平 裁判官大堀誠一 裁判官味村治 裁判官小野幹雄 裁判官三好達)

上告代理人戸田滿弘、同土田耕司の上告理由

第一 第二<省略>

第三 経験則適用の誤りその一

労働安全衛生法第三〇条二項の規定する指名義務不履行と本件事故発生との間に因果関係はない。

一 原判決は一審判決と同じく「本件事故は伊藤敬治がテイオンの請け負ったコンデンサーの冷却用海水チューブの清掃作業の準備作業を行った際、テイオンが請け負っていない(上告人から発注されていない)作業であったコンデンサーからの油抜きを思い付き、独自の判断で勝手に行ったものであるが、前記のとおりテイオンの請け負った仕事に関連性があり、上告人において労働安全衛生法三〇条二項前段に基づき指名した請負人により請負作業間の連絡調整、作業場所の巡視が行われていれば、伊藤の行うべき作業の確認も明確にされ、思い付きによる作業がなされる事態を防げ得たものといえるところ、上告人は栄久丸の定期検査等の作業につき労安法三〇条二項の前段の措置を取らず、専ら請負業者に作業方法を一任し、自らは何等の手当をも施さなかったものであるから、分割発注における発注者としての労働災害防止措置を怠った過失があるというべきである。」(一審判決八〇丁表、裏)と、判示し、指名義務不履行と本件事故発生との間に因果関係を認めている。

二 しかし、その一方、原判決は左記各事実を認定している。

(一) 一審被告テイオンが請け負った工事は、圧縮機三台のオーバーホール、オイル・セパレーターのバンドの固定、冷凍庫の電磁弁コイルの交換、レシーバー、オイルセパレーター及びアキュムレーター内の油抜き、漁艙及び凍結庫のパイプライン内の油抜き、コンデンサー三台の冷却用海水チューブの清掃及び防蝕亜鉛板の交換、冷凍機の冷却ホースの交換(一審判決五八丁表)であって、油抜き作業が、予定されていたのはレシーバー、オイルセパレーター及びアキュムレーター、漁艙及び冷凍庫のパイプラインだけであって、コンデンサーの油抜きは工事の対象には含まれてはいなかったこと。

(二) 本件冷凍装置の回路内の潤滑油の大部分はオイルセパレーターで分離される仕組みになっていて、本来コンデンサー自体からの油抜きはその必要がなかったこと(原判決一八丁表)。

(三) 伊藤敬治は昭和五三年にテイオンが栄久丸に圧縮機を納入した当時、テイオンの従業員ではなかったが、それとは別に病を得て休んでいた丸山機関長に代わり、同船の機関長代理として保船の役に当たったこともあり、同船の内部の構造、機械設備等についてよく承知していたこと(原判決一七丁裏)。従って、原判決は伊藤敬治が栄久丸の本件コンデンサー自体からの油抜きは本来その必要性がなかったことも承知していたと、判断しているものと思われる。

(四) テイオンは昭和五四年一〇月二九日、伊藤敬治に対し、自社で行う予定のコンデンサーの冷却用海水チューブの清掃等の準備としてコンデンサーの側板をはずし、冷却用海水チューブから水抜きを行い、防蝕亜鉛板の数、形状の調査をする業務を命じ、伊藤敬治は同月三一日、テイオンの従業員、倉松雅夫を伴って栄久丸に赴いたこと(一審判決六一丁表)。

(五) 伊藤敬治が当日予定していたコンデンサーの冷却用海水チューブの清掃作業は海水を排出し、チューブ内の水垢等を清掃棒で取るというものであって、清掃及び防蝕亜鉛板の交換作業並びにその準備作業はいずれもアンモニアガスを直接扱うものではなく、鋳物製のチューブを破損しない限り、アンモニアガスが漏出する危険の考えられない作業であると認められること(一審判決七三丁裏)。

(六) 伊藤敬治は本件事故前、栄久丸の整備点検作業に立ち会っていた丸山と会い、同船の食堂でコンデンサーの清掃の準備と防蝕亜鉛板の調査に来たことを告げ、しばらくの間の世間話をしたが、その際、丸山から冷凍機の調子についてその原因はわからないが、圧縮機の潤滑油の消費量は激しく、回路内に相当量の油が貯留している旨の話があったが、その状態について丸山から点検や油抜きの指示は受けなかったこと(一審判決六一丁裏)。

(七) 伊藤敬治は他の漁船に機関長として乗船していたとき、即ち、機関室内には伊藤もしくは伊藤の部下である機関部員のほか、誰もいないときに、コンデンサー以外のドレン抜き弁を開放して油抜きをした経験はあるが、漁船の定期点検期間中、他の作業員が機関室内にいる時に何等の安全対策を講ぜず、ドレン抜き弁を開放したことはなく、又、コンデンサーのドレン弁を本件事故まで開放したことは一度もないこと。このことは、原判決がこれまで他船に機関長として乗船していたとき、他のドレン抜き弁ではあったが、しばしば油抜きをしていたのと同様の方法で(原判決一八丁表)と判示していることから考え、原判決が右のような事実を認定していることは容易に推認できるところである。

(八) 伊藤は思い付きにより、本件コンデンサーのドレン抜き弁を開けて油抜き作業を始める際、油抜き作業を行うことは事前に丸山及びその他機関室内で作業をしていた者に知らせることはしなかったこと(一審判決六三丁表)。

(九) 伊藤敬治が本来行うべきであったコンデンサーの冷却用海水チューブの清掃等の準備作業はアンモニアガスが噴出する危険のないものであり、且つ、コンデンサーからの油抜き作業は元々、テイオンが請け負っていない作業であって、伊藤敬治の思い付きから行われたものであって、それに伴う本件事故は専ら伊藤敬治の行為に起因する突発的な事故であるというべきであること(一審判決七四丁裏)。

(一〇) 丸山機関長はテイオンが冷凍装置の整備点検作業を行うにつき、アンモニアガスを取り扱うコンプレッサー(圧縮機)のオーバーホール等の作業をする時にはセンターの作業を中断し、作業員を船外に出すことをセンターの青山工場長との間で手配していたこと(一審判決七七丁表、裏)。

三 原判決は右のとおり、各事実を認定している。これを要約すれば本件事故は本船の機関室内の状況、従って本件コンデンサーは全く油抜きの必要がないこと、を十分に知っていた伊藤敬治が、当日、命ぜられたアンモニアガス噴出の恐れのない作業を行うに際し、業務命令に反し、丸山機関長その他周囲の者に何等告げる事なく、これまで一度として開放したことのない本件コンデンサーのドレン弁を不要にも突如として開放したために、発生したものということができる。そして原判決はこの突発的な事故の発生について機関室内で機関関係の点検整備を行っていたセンターの責任者青山工場長には全く予見不可能であったと認定してる。更にまた、原判決はアンモニアガス噴出の恐れのある危険な作業をする際には、当該危険な作業に従事する作業員以外の作業員は機関室外に退出し、且つ、冷凍機の配管部等からアンモニアガスを安全に排出したうえ、作業を行うよう、事前に、テイオンとセンターとの間で連絡調整が行われていたことも認めている。そのうえで、請負人がそれぞれ担当の工事について専門家で一流の技術を有していたとしても、工事着手前に上告人が請負人らに対し、安全配慮について注意をしたとしても、また、各工事について請負人間に連絡調整が行われていたとしても、上告人は労働安全衛生法三〇条二項の指名義務を免れるわけではなく、この指名義務の不履行が本件事故を招いたものであると結論づけている(原判決二一丁裏、二二丁表)。

四 原判決は、前記のとおり、労働安全衛生法三〇条の解釈適用を誤り、分割発注の際、注文者又は労働基準監督署長の指名がなされるまで、同法第一項の労働災害防止措置を取る請負人が不在となる空白期間が生ずることを前提に上告人の責任を認めたものであるところ、この解釈そのものが誤りであり、又、注文者の指名が、前記のとおり、自由に為しうるものでないことを考え合わせると、原判決の指名義務違反と本件事故発生との間の因果関係を認めた事実認定そのものも誤りであることは明らかである。しかし、この点をさておいたとしても、右に見たとおり、原判決認定の各事実を経験則に従い、評価すると、指名義務違反と本件事故発生との間に何等因果関係は認められない。何故なら原判決も認定するとおり、本件にあっては、アンモニアガス噴出の恐れのある危険な作業をする際の安全対策を取ることが事前に打ち合わされており、その意味で、労働安全衛生法三〇条一項の措置が取られていたということができるわけであるばかりでなく、本件事故は原判決も認定するとおり、全く何人も予期できない突発的事故というべきであって、労働安全衛生法三〇条一項にいう措置が取られていたとしても防ぎ得なかった事故というべきであり、右のような各事実を認定しながら、労働安全衛生法三〇条二項の指名義務違反が、即、本件事故の発生につながったとする原判決の認定は経験則の解釈適用を誤ったものであり、この誤りは原判決に影響を及ぼすこと明らかである。

第四ないし第六<省略>

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